「ある小学生の英検1級挑戦記」

R.K. (11歳) 英検1級2021年

はじめに

私は、小学1年生の9月からコツコツと英語の勉強を続けてきました。少しずつ単語を憶えながら、興味を持った英語の本をひたすら多読していく、という方法です。この方法が私には合っていたようで、英検も3年生で2級、4年生で準1級と順調に合格していきました。

1級の勉強を本格的に始めたのは、5年生になってから。一気に語彙も長文も難しくなったため、これまでより英語の勉強時間を増やしましたが、5年生の10月(2020年度第2回英検)に初めて挑戦した1級1次試験は不合格。それまで英検に一度も落ちたことがなかったため落ち込むと同時に1級の難しさを思い知りました。その悔しさをバネに、5年生の冬休みは、コロナのせいで帰省できず時間もあったので、1級の過去問を集中的に勉強。その直後に受けた1月の2020年度第3回英検では、1次試験を何とか突破することが出来ました。しかし、1次の合格発表後、2週間足らずで受けた2次試験は、準備不足もあって惜敗。とくに、short speechの点数が5/10と低く、どうやったら1分という限られた時間内にトピックを選び、2分間で説得力のあるスピーチが出来るようになるのか、途方に暮れていました。また、試験官が個々人で異なるスピーチのどこを見て採点しているのかも分からなかったので、このまま2次試験に落ち続け苦労して通過した1次試験の免除回数を使い果たしてしまうことにも恐怖を感じ始めていました。

 

テソーラスハウスとの出会い

そこで、父が見つけてきてくれたのが渋谷にある「テソーラスハウス」という英検1級対策専門校。小学生でも受講可能ということで、取り敢えず体験授業を受けてみることにしました。まず、小林校長に不合格だった2次試験の成績表をカウンセリングで見て頂きました。すると小林校長からは「スピーチの評価が合格点である7点に達していないと、その他の項目がいくら良くても合格は難しいケースがほとんどです。でもスピーチには、ある決まった『型』があります。スピーチ以外の項目の点数は決して悪くないので、その型を身につければ次は合格出来ますよ。」と前向きになれるコメントを頂きました。

続いて、John先生の体験授業が始まりました。John先生からは「不合格だったときのスピーチをここで再現してみてください」との指示。試験当日を思い出しながら、実際の2次試験で行ったものとほぼ同じスピーチをしてみたところ、次のようなアドバイスをいただきました。

① スピーチ時間が短すぎる。今のスピーチは1分30秒でした。これではあなたの主張が試験官には伝わらない。とにかく2分間話し続けてみよう。
② 自分の主張をサポートする理由は2つで良い。しかしあなたの場合、理由を裏付ける具体例が圧倒的に足りない。例えばこんな例を足してみてはどうだろうか。
③ それでも時間が余りそうなであれば、結論を述べた後に将来について自分の予想を述べてみよう。

これが小林校長のおっしゃっていた「型」なのか!と納得しながらアドバイスに従って修正したスピーチを披露し、ホッと一息ついていました。するとJohn先生は次に内容面の改善を褒めてくれながらも「文法ミスが幾つかある」と具体的に誤りを指摘してくれました。スピーチの構成や内容に必死になるあまり、ついつい犯してしまいそうなミスばかりでした。John先生は、ipadでメモをとりながらこんなに細かい所までチェックしてくれていたのか、と衝撃を受けました。そして、そのまま「2次試験対策スピーチクラス」の受講を決めました。

 

2次試験対策スピーチクラス

10週間にわたり毎週土曜日の午後、スピーチクラスに通い続けました。英検直前には、直前模擬クラスも2回受講しました。毎回のテーマは、international politicsやeconomics、education、scienceなど多岐にわたります。宿題は、各々のテーマについて2つずつトピックを選びスピーチを準備してくること。授業では、そのうちの1つを先生の前で披露します(授業では、更にもう1つ、初見のトピックに対するスピーチも行います)。小学生の私にとっては知識が足りず手強い問いもありましたが、池上彰のテレビや本で時事問題を勉強したり、父に教えてもらったりしながら、毎週必死にスピーチの準備を行ってのぞみました。
その際、A4ノートの見開き左側ページに自分のスピーチ案をまとめておき、右側ページには赤鉛筆で先生にもらったコメントを書き込んでいく、という作業を毎週根気よく続けていきました。

スピーチクラスでは、試験本番と同様ノートを見ることは許されません。本番と同じような適度な緊張感の中で、自分の考えを論理的に分かりやすく伝える必要があります。
スピーチの丸暗記は、試験で全く同じ問題が出た時には効果的かもしれませんが、そうした幸運が起きる確率はほぼゼロです。ですが過去問をみると、英検では似たようなトピックが繰り返し出題されているので(例えば、AIの影響、地球温暖化の危険性、インターネットの功罪など)、幾つかの頻出トピックについて自分なりの考え方をまとめ、それをサポートする具体的なニュースや材料を集めておく戦略は、かなり有効です。実際、私はこのテソーラスハウスの授業で作成してきたノートを直前まで何回も見直しました。

毎回の授業で有り難かったのは、ネイティブの先生方の具体的で実践的なアドバイス。John先生、Simon先生、Ciaran先生と、複数の先生に教わりましたが、毎回の授業で驚かされたのは何と言っても先生方の深い知性です。世間話を流暢に話すネイティブは沢山いると思いますが、テソーラスハウスの先生方はどの先生も兼ね備えている教養のレベルが違います。国際政治や環境問題など専門的な話でも具体例を交えながら、私のような小学生にも分かりやすく教えてくれます。そのおかけで英語力だけでなく、スピーチで求められる専門的な知識もある程度蓄えていくことが出来ました。

 

試験本番

こうして迎えた6月、2021年度第1回の2次試験本番。直前の授業では、小林校長先生から「あなたは、英語力や知識は合格レベルに達しているわ。でも自信がないと声が小さくなり、マスク越しで聞こえにくくなるのが悪い癖。試験官に聞こえなかったら点にならない。小学生らしく身近な例を出しながら、堂々と話してきなさい」と、心のこもったアドバイスを頂戴しました。
テソーラスハウスで使っていたノートは、試験会場までお守り代わりに持って行き、待ち時間に何度も見直しました。実際の2次試験本番で渡されたカードは、あまり見たことのないトピックばかりで一瞬焦りましたが、クラスで初見の問題に取り組む練習を積み重ねていた成果もあり、自分の得意分野に引きつけながら落ち着いてスピーチと質疑応答をこなすことが出来ました(スピーチも2分きっかりだったと思います)。
結果は、Short Speech 8/10、Interaction 8/10、Grammar and Vocabulary 8/10、Pronunciation 9/10で見事合格。目標にしていた「小学生の間に英検1級取得」という大きな目標を達成することができました。早速、テソーラスハウスの先生方にも報告に行き、我がことのように喜んで頂きました(まさにvicarious pleasureです)。

 

おわりに

こうして英検1級こそ取得出来ましたが、私の英語力はまだまだです。実際、1次試験の語彙問題では分からない単語も多く、長文問題では時間的な焦りから来る読み違いもあって、リーディングで満足のいく点数が取れた訳ではありません。このため、夏休みにはテソーラスハウスの「学生向け1次試験対策の夏期講習」を受講し、密度の濃い授業で語彙力と読解力の強化を図ったところです。

私は、包容力があってチャーミングな小林校長が大好きです。そして、このテソーラスハウスのアットホームな雰囲気が大好きです。更に英語力に磨きをかけるべく、これからもテソーラスハウスの先生方に教えて頂きながら英語の勉強を続けていきたいと思います。