「テソーラスハウスに通って」

荻本尚美 英検1級二次試験 2010年

英検準1級は学生時代に取得しましたが、英検1級にはずっと挑戦する勇気もありませんでした。しかし仕事で英語を使うようになり、英検1級は必要だと思うようになりました。英検1級一次試験は市販の対策本で勉強し3度目の受験で合格しました。一次試験合格の喜びもつかの間、2次の面接試験で不合格・・・英検1級の難しさを思い知らされました。筆記試験と違って二次面接に合格するには独学では無理と痛感し、2次試験会場でチラシを配布していたテソーラスハウスに問い合わせてみました。校長の小林先生の言葉に励まされ、2次試験対策をテソーラスで頑張ってみることに決めました。

テソーラスのレッスンは、毎週決められた分野の8つのトピックの中からいくつか選んで準備をしていき、1つめのスピーチをします。先生やクラスメートから質問やコメントが出され、ネイティブの先生のフィードバックの後、2つめのスピーチをします。これはその場でトピック・カードを渡され、準備なしにするインプロンプト・スピーチです。

2時間15分のレッスンは気を抜く暇もなく、とても中身の濃いものでした。初めのうちは行きの電車の中からすでに緊張して胃が痛くなって帰ろうかと思ったこともありました。それでも先生方の厳しくもあたたかいご指導でどうにかスピーチの構成のコツをつかんでいくうちに、少しずつレッスンが楽しくなってきました。

それでも私はすぐ知識不足の壁にぶち当たりました。2次試験は英語の面接ですが、英語だけの試験ではありません。世の中のいろいろな分野に関する知識がなければ、英語が話せてもスピーチすることはできないのです。それまでの私は自分の身の周りのことで精一杯で、時事問題にもあまり興味がなく、知らないことが多すぎました。クラスメートの方たちはいろいろな知識や事例をスピーチに入れているのに、私は入れる内容が足りないのです。そんな状態でスピーチのコツをつかんでも魅力あるスピーチができないことに気づき、それからはネット検索などで知らないことを片っ端から調べていくことにしました。政治、経済、環境、医療・・・どんな分野でも最低限の知識を英語で何とか表現できるように努めました。そして先生方が教えてくださったのは、常に自分の意見をはっきりさせることだったので、調べたことに対して自分がどう思うのか考えるクセをつけました。2次試験のために通い始めたテソーラスでしたが、結果として世の中のいろいろな事に対する興味と視野を広げてもらった気がします。

試験が近づく頃には、テソーラスのテキストとキッチンタイマーを身近に置き、なるべく多くスピーチの練習をするようにしました。ノートにはポイントとキーワードのみ書き、原稿を書くことはしませんでした。原稿にしてしまうとどうしてもその通りスピーチしそうになってしまうので・・・大切なのはその場で考えながら話せるようになることだと思いました。

ネイティブの先生方は皆さん博識で、指導力もユーモアのセンスも素晴らしかったです。私よりずっと日本のことを知っていて初めはショックを受けましたが、英語はもちろん、それを越えた知識や考え方に至るまで、たくさんのことを教えていただいた気がします。お世話になったアマンダ先生、サイモン先生、ジャスティン先生にはとても感謝しています。

小林先生はいつも日本人ならではの適切なアドバイスをくださいました。厳しくもあたたかいコメントは、今まで何百人(何千人?)もの受講生を指導してきたことを感じさせる深みがありました。しばしばレッスン終了が遅れてしまいましたが、休憩時間を削ってまでも熱心に指導してくださいました。

またクラスメートにも恵まれました。いろいろなお仕事の方々でしたが、皆さん1級取得のために一生懸命努力されていることが伝わってきて「私も頑張らなければ!」と刺激を受けました。1次試験に受かった方々なので英語も知識もレベルが高く、一緒にディスカッションするのがとても楽しかったです。どんなスピーチでも熱心にメモをとって聞いてくださり、質問やコメントを考え、情報を共有し合ったクラスメートの方々にとても支えられていたと思います。同じ目標を持った人たちと勉強することはこんなに充実しているんだと実感しました。

大学卒業後、こんなに勉強した日々はなかったと思います。時には熱で寝込んでいる子どもたちを夫に任せて不安な思いで通ったこともありました。11月に入ってテソーラスに向かう途中で明治神宮を通る時、七五三の着飾った家族連れを見ると、娘の七五三参りを犠牲にして勉強している罪悪感でつらくなったりもしました。

いろいろなことがありましたが、テソーラスのあたたかい雰囲気の中で英検1級2次対策の勉強ができて幸せだったと思います。テソーラスで教えていただいたこと、先生方とクラスメートの方々との出会いは私の一生の宝物になりました。ありがとうございました。