「翻訳の仕事とテソーラス」

K.T.  英検1級2023年合格

飛行訓練とテソーラス

飛行機好きな私が米国の南カリフォルニア(SOCAL)で最初に取得した資格は、Private Pilot License (PPL)(自家用操縦士技能証明)です。これは、米国でプロのパイロットになる人も含めて、飛行機を操縦するために必ず最初に取得する免許です。ある一定の視程(どれくらい遠くまで見渡せるか)と雲からの間隔が確保されているときのみ飛行できる免許です。この飛び方は、地上の物標を見ながら飛行するので「有視界飛行方式(VFR)」と呼ばれています。つまり、天気の良い日しか飛べない免許です。私はセスナ152型機という2人乗りとセスナ172型機という4人乗りの飛行機を使用しました。訓練を終え、試験に何とか合格しましたが、不思議と「これで終わり」とは思えませんでした。

 

その4年後に取得したのが、Instrument Rating(計器飛行証明)です。これは、航空交通管制(ATC)の管制官の指示通りに飛ぶ「計器飛行方式(IFR)」で飛行するときに必要な資格で、曇りや雨の日にも飛ぶことができます。一般に航空会社の便は、天候に拘わらず、この計器飛行方式(IFR)で飛んでいます。訓練機は前回と同じセスナ152型機とセスナ172型機でした。ATCとの通信が多くなるため、VFRより英語での通信の機会が増えます。

 

試験は、Knowledge Test(筆記試験)とPractical Test(実地試験)に分かれ、Practical Test(実地試験)は更に、Oral Portion(口述試験)とFlight Portion(実技試験)に分かれています。テソーラスの授業が全てにわたって役立ったのはもちろんですが、特に、Oral Portion(口述試験)で役に立ちました。2~3時間に及ぶ試験官からの質問に対して、できる限りわかりやすく論理性と説得性をもって答える必要があるからです。この点について教官から信頼をいただけたのは、テソーラスでの勉強のおかげです。試験勉強の際、内容を理解する上でも、テソーラスで学んだ論理性を活用すると覚えやすいです。

 

計器飛行証明の試験に合格した後、帰国日までに1週間程度ありましたので、この間に勉強してInstrument Ground Instructor(IGI)(地上教官免許-計器)を取りました。この試験は筆記試験だけでした。米国では、飛行教官が飛行訓練と座学訓練の両方を教えることが多いのですが、座学のみを専門に教える地上教官という資格・仕事もあり、座学訓練を地上教官に任せている飛行学校もあります。

 

翻訳の仕事とテソーラス

私がテソーラスに通って英検1級を目指していたのは20年ほど前になりますが、その時に身に着けた勉強法の中で、特にデリバリーの手法は、15年以上携わっている翻訳の仕事で今でも役に立っています。翻訳は異なる言語の橋渡しをする仕事なので、両者の構成の違いや特徴を理解することがとても重要で、そのコアとなる部分をテソーラスで徹底的に鍛えられたように思います。また、私は4回目のトライで1次試験と2次試験に同時合格しましたが、その過程で「私は永遠に合格しないのではないか」と落ち込むこともありました。でも、テソーラスの仲間たちに励まされた帰り道や常に「生徒さんのお役に立ちたい」という気持ちで授業を構成し、その日の生徒さんのスピーチを分析し良い所と直すべき所を的確に指摘してくださった小林先生の存在があってこそ、乗り切れたのは間違いないことです。

 

米連邦航空局(FAA)発行の「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge (PHAK)日英対訳ノート

テソーラスでの勉強を経て英検1級、翻訳者としてのキャリア、そして、米国での自家用操縦士免許の取得を経て、最近、自分の大好きなことが1つの形になりました。それが、米連邦航空局(FAA)が公示している「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge (PHAK)日英対訳ノート」です。「「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge (PHAK)」は、17章から成るパイロット訓練の座学の内容を詳しく網羅した教科書的な存在です。その内容は、航空力学、飛行の原理、航空計器、航空機のシステム、空域、航空気象、空港運用から航空における意思決定や医学的要因等まで、実に幅広い分野を勉強します。米国の飛行学校には、プロを目指す方のみならず、一般の方も多く訪れています。訓練中は、日々の飛行訓練や座学訓練に追われ、時間的なプレッシャーもあり、ある程度、英語力に自信のある方であっても、英語ですべてを理解することが難しい場面もあります。そんなときに役立てていただけたら嬉しいですし、何より、自分が更に深く理解するために対訳ノートを作成しました。全て手作りなので、費用ばかり掛かってしまいましたが、とにかく完成しました。

 

 

FAA PHAK 日英対訳ノート(パイロット初期訓練向け資料)

サムネイル

米連邦航空局(FAA)が発行しているパイロット訓練用の教科書的存在「Pilot’s Handbook of Aeronautical Knowledge 」の全訳(まえがき、目次、用語集、補足資料などを除く)を日英対訳形式にまとめたものです。理解し易くするため、適宜、軽い説明も入っています。B5ノート、3冊に分冊。