「英検一級突破攻略法」

横田完一 2015年

英検1級突破に向けて

テソーラスハウス卒業生 横田完一

まず申し上げたいのは、普通に日本で英語教育を受けた人が英検1級を突破するには、相当な覚悟と執念、不断の努力が必要という事です。

それだけ困難な資格ですが、その価値は非常に高いです。例えば、通訳・翻訳業界で働くには、英検1級は最低限の資格であり、新たな扉を開くパスポートになると思います。又、現在の英検1級は語彙力、読解力に加え、小論文作文により実践的なライティング力や2次試験でのスピーチと質疑というプレゼン力も要求されるので、ビジネスで英語を使う訓練にもなり、資格だけに留まらないメリットが有ります。

ここに書かれた事は、合格へのアプローチの一例で、向き不向きも有ると思いますが、少しでも皆さんのご参考になればと思います。

1.語彙力

1次試験の第1問の25の単語、熟語問題は、大きな得点源です。まず、ここで9割以上を目指しましょう。

4択で選ぶには、選択肢の内、3つ以上の単語の意味を知っている必要が有ります。また熟語は決まり文句なので、理屈抜きに数を覚えるしかありません。殆どの英検1級の単語、熟語対策本のレベルは残念ながら不十分です。唯一、「最後の一冊 TOEFL, SAT, GMAT, GREの英単語」(山口昌彦著、南雲堂フェニックス)はレベルが合っており参考になります。それでもすべての網羅はできていません。

では、いかにして語彙力を上げるか?それには時間がかかります。

まず、あなたのお気に入りの英和辞典を用意下さい。私の場合は、大修館の「ジーニアス英和辞典」と研究社の「新英和中辞典」でした。まず「ジーニアス」を見て、不明部分は「中辞典」で補いました。

辞書の’a’から始まるページから一つずつ単語を見ていきます。そして、A5か B6版の持ち歩きやすいサイズのノートを用意します。もちろん B5版でも構いません。

知らない単語が出てくれば、その単語を使った例文を作ってノートの1行に書き、その単語に赤、青、緑など好きな色で下線をします。知ってる単語でも、それを使った知らない熟語が有れば同様です。

例えば ‘flounder’には「カレイ」(n)と「もがく」(vi)の意味が有るので、’Flounder is floundering in the sea.’とします。

どれだけ知らない単語が有るかにもよりますが、私の場合、B6版ノート6冊になりました。

少しずつでもたまった分を通勤、通学時に見返して思い出しましょう。英語しか書かないので、忘れる時も有りますが、その場合も文意から単語の意味をリコールする訓練をします。

どれだけ時間がかかるか分かりませんが、これを1度やっておくと第1問は軽く9割は取れ、しかも時間も最短で済むので余裕ができます。

2.速読力

英検1級一次試験では、読解問題が多数有り、大きなウェイトを占めています。
ここを短時間でクリアしないと、最後の小論文作文に十分な時間が取れません。ではいかに速読力を上げるか?

答えは Timeです。Timeを定期購読して読みましょう。一般に Newsweekなどと比べ敬遠されがちですが、Time の記事には単にニュースを伝えるだけでなく、最後のEssayなどライターの思想が含まれる場合が多いです。又、高度な単語も出てきますが、語彙力も上げるチャンスです。

読み方は、最初から最後のページまでなるべく早く読みます。不明な単語やイディオムらしきものが出てきた時は、色鉛筆などでマークします。蛍光ペンでは、まっ黄色になる懸念有り、お奨めできません。自宅に戻ってから、辞書で調べ、例文ノートに追加しましょう。通勤、通学時に自宅駅から目的地駅間で何ページ読むか決め、徐々に増やしていきます。目標達成できなければ、乗り過ごすくらいの気合いでやりましょう。

Timeは時に難解ですが、英語特有のレトリックが豊富で勉強になります。シェイスクピアやギリシャ神話に由来する表現なども多く、好奇心も満たされます。

実際の問題では、まず回答の選択肢を全部ざっと見て、何に関する質問かを把握してから問題本文を読み、該当部分が有れば回答します。中には全体の大意を問う質問も有り、その場合は、最後に回答します。

3.速聴力

リスニング力でなく、速聴力というのには理由が有ります。

1級対策のリスニング問題や模擬試験をいくら普通にやっても、そんなに急にはリスニング力は上がりません。何故か?聴く速度の問題です。

本番と同じ速度で聞いても駄目なのです。昔、巨人にいた長嶋選手か王選手は集中した時はピッチャーの投げるボールが止まって見え、縫い目まで見えたという伝説が有りました。リスニング教材は、CNN, CBS BBCのニュース番組など豊富に有りますが、これを録画やデジタル録音し、最低1.5倍の速さで聞きます。慣れてくれば 2倍に挑戦しましょう。これを、しばらく続ければ、リスニング問題はゆっくり聞こえ、楽に解答できる筈です。このようなメソッドのリスニング教材も有ったかもしれませんが、同じ原理ですので、トライする価値は有ると思います。

4.構成力

読者の皆さんは、ここまでで、「あれ小論文作文が抜けているぞ」と思われたかもしれませんが、大丈夫です。実は、一次の小論文と二次の面接は同じアプローチで良く、小論文対策を極めれば、面接も大丈夫なので、一挙両得といった所でしょか。

小論文では、まずテーマが有り、提示される複数のポイントを盛り込んだ作文を200字程度で要求されます。テーマは、Good or bad のように、Yes / No を問うものとテーマに関する意見を求めるものの主に二種類でしょう。

この作文を、スピーチと同じアプローチで作りましょう。下記はほんの一例ですがまず、テーマに関する世の中の動向、一般知識を書きます。次に「私は~と信じる。」とし、次にその理由(サポート)を2つ書きます。抽象的な話だけでなく、何か事例が有ると説得力が増しますし、面接では質問を引き出す誘導ポイントにもなり、こちらの思う壺です。

小論文の練習では、複数の解答案を作りましょう。又、構成を考える時間を短くしていきましょう。面接では、トピックカードを見てから1分しか時間が無いので、この時間は重要です。解答案を一つずつ書き留めてゆけば同じパターンの出題への対策になり、心強いです。これは、見易さもあるのでテキストでも良いので、PCやスマホで打ってためていきましょう。

What do you think about the global warming? に対する解答例

1) Background テーマに関する一般的な情報、なるべく短く。

Global warming is getting serious these days especially for small island nations in the Pacific Ocean concerning the rising sea level. I heard there are several island nations like Tuvalu which may be totally under water if the current sea level rise by 5m or so. 具体的事例で、つかみを取る。

2) Main Thesis 主要な考え、Yes or No, I believe—, In my opinion–など。

In my opinion the global warming can be mitigatd by the effort of both developed and developing countries. 発展国と発展途上国のどちらの努力も必要。

3) Support 上記アイデアを支持するポイントを二つ書く。Firtly,– Secondly,—

Firstly, people in the developed countries should reserve more energy by advancing eco-friendly technologies. Now the conversion efficiency of solar cell is not so high and very wide roof area must be covered by solar panel to supply reasonable electiricity for home appliances. If more efficient solar cell will be invented, young people will not need to look for AC outlet to charge their smart phones everywhere but charge from small solar cells attached to their caps or bags any time.
発展国では、更なる技術の進歩を。

Secondly, developing countries should more accord with Global Environment Policy led by the United Nations and related organizations. Strong leadership is required to realize this. In 1990s, the Kyoto Protcol was adopted to preserve
the environment but it was rejected by China. If they could agree with such accord, they can reduce the emission volume of green house gas such as carbon dioxide at the industrial level.
途上国では、国際協調により規制強化を。

4) Conclusion 結論と今後への期待

I hope natural environment can be reserved by these measures.
これらにより、今後の環境保護に期待する。

5.テソーラスハウスの2次対策

私も20年前にここで鍛えられましたが、テソーラスの講師陣は非常に優秀でレッスンでは適度の緊張感の中、実践と同様のタイミングでスピーチ、質疑の訓練ができます。更に自分の意見に導くサポートが弱ければ、何故そう考えるのかとの鋭い突っ込みが有り、又、時に、スピーチテーマを題材としてディベートまで行い、より論理的な思考ができるようになったと思います。日本語は、「ああしてこうしてこうなる。」という演繹的なアプローチとなりますが、英語ではより帰納的に結論を導く必要が有り、「私はこう思う。なぜならこうこうであるから。」という思考パターンに変えていく必要が有ります。

6.最後は度胸

面接では、試験官とのコミュニケーションに注力しましょう。試験官とて人の子ですからいかにフレンドリーに接するか印象は大事です。部屋に入ったら、まず2名の試験官とアイコンタクトし、軽く笑顔になりましょう。この時、日本人はついお辞儀をしがちですが、それは不要です。あなたが受けているのは、英語検定であり、英語圏の欧米社会でのコミュニケーションが想定されています。従い、まず笑顔で”Hello”というのが、緊張をほぐす、いわば “Ice Breaker” になると思います。

トピックカードを見てテーマを決めたら、まず深呼吸し落ち着いてから、テーマを伝えましょう。そこからは、上記のアプローチで構成します。この順序は、結論、サポート2個、最初に来る背景となります。メイン部分さえしっかりしていればしゃべり出しは、ウォーミングアップのつもりで、言葉をつないで行っても大丈夫でしょう。2分のタイムマネジメントは何度も、体内時計で感覚がつかめるまで練習でシミュレーションしておきましょう。

スピーチは、就職活動の面接と思って、面接官と適度なアイコンタクトを取り相手がフォローしている事を確認しながら、やや大きめの声ではっきり発音しましょう。特にポーズの取り方は大事で、意味のかたまりとなる節や句を切り気味に話すと、より伝わりやすくなります。

最後の質疑ですが、これもいくつかパターンが有ります。あなたの意見に対する反対意見、説明内容についてのつっこみ、問題意識に対する解決案などです。

この対策は、練習で同じテーマで複数の解答案を用意することです。その中には別の解答に対する質問の答えが入っているものです。このように、多面的にアプローチしていると、大抵の質問には答えられます。

又、あなたは一国の首相でも大統領でもないですが、個人的な英語試験の面接で何の責任も有りませんので、大きな事でも前向きに話しましょう。否定的な質問の場合でも、どこかに希望の灯は有るものです。そのようなポジティブな態度も好印象として評価されるでしょう。最後に、OBとして英検1級に果敢に挑戦される皆様の合格をお祈りします。