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1分間で瞬時にアイデアが浮かんだ!(試験本番編)

小野寺 毅 英検1級二次試験 2009年

小野寺 毅さんの「英検1級二次試験合格体験記(二次試験対策編)」はこちらです。

5.二次試験受験

さて、本番である二次試験の本番です。面接試験の部屋に入って、まず最初に気付いたのは、日本人の面接官の声が小さめで聴き取りにくいことでした。こういう点は運不運の1つですが、この程度は甘受すべきものだろうと腹を括りました。
本題前の質問は「いつもの日曜日の朝は何をして過ごしているか」でした。

てっきり自己紹介をさせられると思っていたので出鼻を挫かれた格好です。
「ラジオで音楽番組を聞いている」と答え、「どんな音楽か」との外国人の面接官の問いに「主にポップスである」と返しました。ここでスモールトークの質疑は終わったのですが、今思うと、外国人面接官の表情はもっと情報を求めていたように思えます。ラジオ番組名や好きなアーチスト名といった具体的な情報を盛り込むべきであったとは今になって考えるところです。

机上のカードを裏返すように指示され、いよいよ試験開始。
緊張しつつ5つのトピックを見て瞬時に思いました。「やった、これなら何とかなるぞ!」と。スピーチできそうなトピックが2題も含まれていたからです。
「民主主義国家は非民主主義国家と外交関係を断つべきか否か」というトピックには「北朝鮮」というキーワードが脳裏に閃き、「先進国の製薬会社は発展途上国のために薬価を引き下げるべきか」というトピックには、「アフリカでは経済的な困窮のためにエイズの薬が買えない患者が少なくない」というキーセンテンスを思い出しました。
一瞬、キーセンテンスのある後者のトピックにしようかとも思いましたが、話を膨らませることは難しそうに思えました。そこで前者のトピックに頭を切り替えると、「北朝鮮」から「孤立化は暴発を招き、核兵器を使用するかも」「飢えに苦しむ一般国民に罪はない」という2つのキーセンテンスが思い浮かびました。ここで、トピックを前者に決めて、2つのキーセンテンスを核にしてスピーチを組み立てよう、と考えたところで1分間のタイムアップです。
1分間でこれだけのキーセンテンスやキーフレーズが瞬時に思い浮かんだのも、テソーラスのレッスンで場数を踏んでいたからです。「アフリカでは経済的困窮のために・・・」というキーフレーズは「英語スピーチハンドブック120」でもレッスンの中でも出てきたので必然的に覚えていたものです。「北朝鮮」というキーワードから2つのキーセンテンスを導き出したのも、1つのテーマやトピックを「ミクロ・マクロ」や「対内・対外」といった2つの視点で見れば2つのポイントが見出せるという訓練が出来ていたからです。話を展開するためのコンセプトを内包したキーセンテンスキーフレーがあれば、あとはそれを説明し、例を示すだけです。
イントロと結論を前後に付けて、10秒ほど時間を余らせてスピーチを終えました。

スピーチの最中、日本人の面接官が「核兵器」など要所々々のキーワードのところで時折うなずいていたので、内心「いけるぞ!」と思ったものです。

質疑応答に入り、その第一問は「北朝鮮は民主主義国家と外交関係を断とうとしているが、どう思うか」というものでした。
「それは脅しだ。外交関係を断ちたいという振りをしているだけで、本音は違う。本当に外交関係を断ったら困るのは北朝鮮だ。」と回答しました。ここまででも十分回答になっていたはずですが、得意のトピックだったので私も調子に乗ってしまい、「民主主義国家はこのような戦略をよく調べて賢明に対応すべきだ」と続けました。

そこで足を掬ってきたのが第二問で、外国人の面接官が「How?」と尋ねてきたのです。「いかに賢明に対応するのか」という具体的な情報を求める質問ですが、調子に乗って発言した迂闊な受験者にとっては精神的動揺を招いて回答に詰まりかねなくなるもので、少々意地の悪い面接官の質問戦術が透けて見えました。おそらく、1級の面接ではこのような質問や引っ掛けは少なくないことと思います。しかし、逆に言うなら、この手の質問を軽くいなせば、こちらの力量を思いっきり示せるわけですし、二次試験の流れを一気にこちら側に引き寄せることが出来るはずです。
面接官がこちらの精神的動揺を誘っている意図が看破できたことと、実はそれほど難しい質問ではないこともあり、間をおくことなく「たとえば、敢えてそんな脅しを無視する」と答えられました。もっと長く答えればベターだとは思いましたが、さすがにそこまでの余裕やトピックへの知見は私にはありませんでした。

仕切りなおして、第三問は日本人の面接官から「北朝鮮への経済制裁はさらに厳しくするべきか」というものでした。
これに対しては、「経済制裁の程度は、北朝鮮の対応次第で厳しくしたり緩くしたりすべきである。現行の経済制裁は適切であると思う。今後厳しくするか否かは今後の北朝鮮側の対応次第である。」としました。あまり中身のある答えでもありませんが、とりあえず面接官は納得してくれたようです。実は、この~次第である(it depends on~)というのはテソーラスのレッスンで質疑応答の際に私が多用した表現でした。無難な受け答えや、あまり専門知識のない分野で質問された場合によく使いましたが、さらなる質問を呼んだり揚げ足を取られたりすることのない、使い勝手の良い表現であると自分では思っていました。

第四問
は「北朝鮮の他に非民主主義国家はどんな国があるか」というものでした。これは外国人の面接官が尋ねてきたのですが、やはり今思うと少々危険な質問でした。下手に中南米やアフリカの軍事色や独裁色の強い国を挙げたならば、更なる突っ込んだ質問を喰らって知識不足が露呈して墓穴を掘る羽目になったかもしれないからです。ミャンマーあたりを挙げても反証を喰って立ち往生する可能性もあったと思います。たまたま私の口から出たのは、「どの国が民主主義国家で、どの国が非民主主義国家であるというのは難しい。現在、中国ではウィグル族が弾圧されている。ロシアでは、元KGB職員らによってジャーナリストが殺されているとも言われている。言論の自由や投票権のない国家が民主主義国家と言えるだろうか。でも、中国やロシアとは国際社会において外交関係を断つわけにはいかないので民主主義国家として扱っているのだ」という答えでした。「ウィグル族」といった時事ネタも使った上で無難に返答したつもりだったのですが、今考えると、私のスピーチの「非民主主義国家と外交関係を断つべきではない」という主張と齟齬があったのです。しかし、何故か突っ込みの質問はありませんでした。なお、私の回答中の「言論の自由や投票権」といったキーワードは英語スピーチハンドブック120で覚えていたものでした。

第五問
は日本人面接官の番で、「日本が今ODAを使うべき国はどこだと思うか」という、スピーチや今までの質疑応答の流れからやや外れた内容のものでした。ここでタイムアップが告げられましたが、それと同時に私は「東チモール。国が初期段階。」と言っていました。

質疑応答を終えた後、日本人面接官の言葉に応えてカードを渡そうとしたところ、「カードを裏返しにして」と告げられ、慌てて裏返しにしました。ここは全くの油断であり、「interaction」における減点材料になった可能性は否定できません。
こうして、二次の面接試験は終了しました。
たかだか10分の試験でしたが、面接の部屋に入ったところから既に試験開始であり、様々な点から面接官は受験者をチェックしており、特に質疑応答では心理的な駆け引きの要素も多分にあったように思えました。
私としては、スピーチにも質疑応答にも、テソーラスのメソッドに則って例示や時事ネタを盛り込むことができたし、全般的に自分としてはほとんどベストの出来だったことから「何とか合格しているだろう」と思いつつ帰路に着きました。

6.試験結果

9日後、私はサイトで自分の合格を知りました。合格点が60点のところを72点。余裕の合格のはずですが、私としては必ずしも双手を上げて万歳をする気持ちにはなりませんでした。
セクション1、2、3、4がそれぞれ24、24、12、12。
点数から、二人の面接官の評価は一致していたことが推察されます。
スピーチや質疑応答は五段階評価で言えば4。文法と語彙、発音はそれぞれ五段階評価で言えば3。
自分自身、元々発音にはあまり自信がなく、会話では文法が雑になる癖があることがわかっていましたし、得意なはずの語彙も本番ではあまり駆使できずに終わってしまったので、3という評価は甘受すべきものでしたが、やはり「かなり客観的かつシビアに評定されたな」とは感じました。
強運とテソーラスでの蓄積に支えられて万全にこなしたはずのスピーチと質疑応答も、いずれの面接官も五段階評価で満点を付けるに至りませんでした。4をいただけただけでも満足するべきかもしれませんが、一方で、世の中にはまだまだ非常に優秀な方々がいること、自分の見識がまだまだ未熟なこと、英語学習にはまだまだ先があることを思い知らされた次第です。

私の英検1級合格奮闘記が、これから受験される皆様のお役に立ては幸甚です。

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